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WORKS

CHIGASAKI HOUSE

設計・監理:玉田脇本建築設計事務所/玉田誠、脇本夏子

構造:Graph Studio/福島佳浩、氏岡啓威

施工:横溝建装/清水佳和、ファン・バン・タン

所在地:神奈川県茅ヶ崎市

竣工:2024年5月

用途:二世帯住宅

構造形式:木造/地上2階、地下1階

写真:Kenta Hasegawa

メディア

GA HOUSES 195

​新建築住宅特集2024年9月号

場レポート

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「群れ」の住まい 

3世代の6人が共に暮らす112m2の住まいである。

海沿いの明るく陽気な雰囲気をもつ住宅密集地で、戸建て住宅で囲まれた袋小路の突き当たりに敷地はある。親世帯が住んでいた住まいを、子世帯3人・親世帯3人の合わせて6人のための住まいへ建て替える計画だ。子世帯の夫婦は近所で美容室を営んでおり、小学生の子供は祖父母と多くの時間を過ごす。親世帯は自宅を仕事場としたり都市部へ出たりなど、6人の暮らし方や関係性は多様であった。

われわれは、6人がそれぞれ自分の居場所を見つけ個性ある過ごし方をしながらも一緒にいられるような住まいを考えることとした。魚の「群れ」が集まったり離れたりを繰り返しながらゆるやかなまとまりをつくるような住まいのかたちだ。

建築は全体をグリッド状に構成しつつ部分的に柱を抜いたり梁にズレを設けることで、空間に連続性と一体感のある広がりをもたせた。そして半地下から屋上へ動線が抜けていく5層のスキップフロアとした。床の高低差でできた視線のズレは小さな居場所をつくり、その境界には腰かけたり、もたれかかったりといった身体的なふるまいが生まれ多様な暮らしの風景が広がる。また、南北の庭をつなぐ空間構成は、周りの密集する住宅の親密な雰囲気やそれらが南側にもつ小さな庭の緑の環境を内部に引き入れる。

1階は前庭に面した縁側と掃き出し窓により街と連続した場所となり、子供が友達と内外を行き来して遊んだり、庭いじりをする隣人たちと会話が生まれる場となるだろう。中間階には食堂や水回りを配置した。食堂にある大きなテーブルは、食事や勉強、家事や仕事など、異なる生活リズムで同時に過ごせる場所となる。そして半地下階と2.5階には4.5〜7.3m2ほどの小さな室を設けた。建具や可動家具の開閉によって室同士を連続させたり、共用空間との繋がり方を選択できる。住まい手の性質や住まい方が変化しても柔軟に住まうことができるだろう。

建物の角には2方向に開かれた窓を、空間を巡ると必ず視線の先に外の風景が目に入るよう配置した。多方向から光が差し込み、風がさまざまな方向へと通り抜け、それぞれの居場所には時間や季節ごとの多様な特徴がもたらされる。それと共に、ひとつの場所に集まっていても視線が分散され、お互いの意識にはちょうどよい距離感が生まれるだろう。

そうして家族や社会の変化に呼応しながら姿形を変えていくような「群れ」としての6人の住まいになることを期待している

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